新型コロナウィルスによる修学旅行中止 取消料の負担は?旅行会社社員の本音

旅行業界の裏事情

私は現役の旅行会社社員です。旅行会社の社員目線から、新型コロナウィルスによる修学旅行の中止や取消料は誰が負担するのかなどの記事を書いていこうと思います。

沖縄平和祈念堂(筆者撮影)

新型コロナウィルスの影響により、2020年度の修学旅行を中止もしくは延期する動きが全国的に広がっています。命にかかわることですので、こういった動きがあるのは当然ですし止むを得ないことと思います。

Web上のニュースで、ある自治体は、修学旅行の中止についての取消料を保護者負担とさせる記事を読みました。

このような非常事態の場合、取消料は誰れが負担するべきでしょうか?

前書き

まず前段として、学校と旅行会社の間では、どのような契約が交わされているのでしょうか。

受注型企画旅行契約

修学旅行は、学校側から「かれこれこういう条件で旅行の計画をしてください」と依頼を受けて、われわれ旅行業者が計画を作成するものです。

このように、旅行者(この場合は学校)からの求めに応じて旅行日程や見積りを作成し実行する旅行形態を「受注型企画旅行」といいます。そして、旅行業者と学校は「受注型企画旅行契約」を交わすことになります。

★参考までに、旅行会社の店頭にあるパンフレットから旅行を申し込む場合は「募集型企画旅行契約」、単純に鉄道のチケットや観光のチケットなどの取引は「手配旅行契約」といいます。

ほとんどの旅行会社は国土交通省が定めた「標準旅行業約款」を取引の基準としており、各社とも内容は一緒です。修学旅行の場合は、「標準旅行業約款」のなかの<受注型企画旅行契約の部>が、取引の拠り所となります。

ちなみに標準旅行業約款は、検索をすると各社のものが表示され、誰れでも見ることができます。

それでは、新型コロナウィルスを理由とする修学旅行の取消の場合の取消料は、誰れが負担するべきなのでしょうか?それぞれの立場から考えたいと思います。

ニセコ 尻別川でのラフティング(筆者撮影)

取消料の負担は誰れがするべきか

保護者の立場として考えた場合

修学旅行の契約は、学校と旅行会社との間で行われます。保護者は、学校から示された旅行代金を支払って子供を参加させるだけの立場であって、直接的に契約には絡んでいません。

そのため、取消料請求の持って行き場がないからといって、保護者に負担させるのは見当違いだと思われます。

但し、修学旅行のための準備でかかった経費が既に発生している場合、例えば講師を招いて事前学習を行ったとか、ガイドブックを購入して生徒ひとりひとりに配布済みだとか、海外修学旅行においては英語のレッスンプログラムを既に受けたなど、生徒がすでにサービスの提供を受けている場合は、その対価は支払いを求めても理解が得られるものであるように思います。

学校の立場として考えた場合

学校は修学旅行の契約の当事者です。

そして、修学旅行の中止は、学校から旅行業者に通知されることによって初めて取消処理がされるので、学校側の意思によって修学旅行の中止がなされたと認められます。

そのため、旅行業者から取消料を請求されれば、その支払いをしなければなりません。

「なんで学校が払わなくてはならないのか?」

「そんな金は用意できない」

と言われてもそれが契約というものです。理論上は学校に取消料負担の義務があると思われます。

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ところが学校側にも言い分があります。例えば、

「もし修学旅行の実施を強行して、感染者が出たらだれが責任をとるのか。」

「教育委員会から実施を見合わせるように通達が出たので、止むを得ず中止にした。」

などです。

ごもっともな意見ですよね。

ですので、旅行会社としては学校負担を前提として取消料の請求書を出すのは、学校が納得してからでないと出せないという現実があります。また、これは他社の事例ですが、海外語学研修を中止にした学校に、規定内の取消料請求をすることで学校側の同意を得たケースもあります。

旅行会社の立場として考えた場合

旅行会社も修学旅行の契約の当事者ですが、旅行会社は消費者ではありませんので、そもそも取消料を支払うという概念がありません。

ここでは取消料を請求する根拠や仕組みについて解説いたします。

企画料金って何?

冒頭の前書きで、受注型企画旅行契約について触れました。旅行会社は学校と修学旅行の契約をする際に、取消料について明記した書面を渡しています。日本旅行業協会(通称JATA)のHPに載っている見本があります。

   >>> JATAの見本はこちら

3ページ目の「9.旅行契約の解除」の部分をご覧ください。

旅行開始日の前日から起算してさかのぼって 21 日目(日帰り旅行にあっては11日目)にあたる日まで ・・・・・・ 企画料金相当額

Web上のニュースでは、保護者あてに企画料金と返金手数料を請求したとありました。

出発の21日前までは企画料金相当額と明記されています。じゃあいつからかかるの?というご意見には、契約を結んだ日からということになります。そのため、旅行契約締結後には、旅行業者は学校側へ取消料の請求ができるということになります。また、出発の20日前からは表に記載のパーセンテージの取消料がかかります。

では企画料金相当額というのはどれくらいの額なのでしょうか?

こちらも旅行業約款で決められていて、旅行代金の20%以内と定められています。ということは、ひとり100,000円の旅行代金の場合は、その20%で20,000円の企画料金までは認められていることになりますが、現実にはその地域によって違うと思われます。私の経験した地域のなかでは、高くて8%という会社がありました。

請求できる額は決まっている

では仮に、ひとりあたり旅行代金100,000円として5%の企画料金で契約したとします。この場合、出発の21日前までの修学旅行取消であれば、ひとりあたり5,000円の企画料金を収受することができます。実際に関係機関へ支払う実費がなければ、その5,000円は単純に旅行会社の収益となります。

「なんや、旅行会社ボロ儲けやん!」

などと言いたくなるお気持ちも分かりますが、我々からすると非常に深刻な問題です。

旅行会社も営利企業ですから、会社としての経営計画もありますし、社員としての予算も達成させなければなりません。それに株主への還元もしていかなければなりません。

修学旅行がちゃんと実施されていれば、5,000円以上の収入が見込めた筈です。また、それまでに費やした時間、人件費、諸経費もかかっています。ですので、単純に5,000円が収入となったわけではないのです。

さらに深刻なのは、この時点で既に関係機関の取消料がかかる場合です。

修学旅行の取消規定について、例えば宿泊機関などは、一部生徒の取消の場合だと、直前でない限り割りと融通を利かせてくれたりします。

ところが全面取消となると話は別です。

宿泊日の〇ヶ月前から〇%の取消料と言われたら当然支払わなければなりません。それも企画料金のなかでまかなえればまだいいです。でも実際には、例えば1泊あたり2,000円の取消料が3泊分だと6,000円ですから、5,000円の企画料金ですと1,000円オーバーになります。それでも旅行業約款で定められている額以上は請求することができません。

その場合、オーバーした1,000円は旅行会社の持ち出しとなってしまいます。

つまり、修学旅行を実施してもいないのに実績がマイナスになるということです。

では誰れが負担するのか

感染症対応地方創生臨時交付金

新型コロナウィルスによる修学旅行の中止・・・、生徒さんたちにとっては、一生に一度の思い出作りのイベントが無くなってしまい、あまりにも無念です。保護者の方も、自分の子供の年代だけ修学旅行が無かったという気持ちを、ずっと持ち続けてしまうことでしょう。学校の先生方も、特に該当学年の先生は、自分の受け持ちのクラスの修学旅行が無くなるなんて、きっと虚脱感でいっぱいでしょう。

誰れも悪くないし誰れも責められない。でも取消料は現実問題としてかかっているし、どうしたらいいものか。

こんな悩める国民のために、ちゃんと国が動いてくれました

修学旅行の中止にかかわるキャンセル料支援について、内閣府のホームページに記載があります。ただ内閣府のホームページを見ただけでは分かりづらいので、下に貼った内閣府地方創生推進事務局のページをご覧いただくと、いろいろ載っています。

   >>> 内閣府地方創生推進事務局のページはこちら

クリックするとこんな画面になります。

新型コロナウィルス感染症対応地方創生臨時交付金として、第二次補正予算が通っています。上の図の赤矢印をクリックするとこんな画面になります。

画像をクリックできます

このなかの、4.使途のところで明記されています。下の赤ワクのところです。

画像をクリックできます

ここにしっかりと「修学旅行等のキャンセル代への支援」と明記されています。

ですので、修学旅行の中止にともなう取消料は、国が負担してくれることが分かります。

実際の流れについて

新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金は、国から各都道府県の地方創生担当課などに配布され、さらに市町村に配分されます。

学校の先生に伺ったところ、既に管轄の自治体から取消料についてのヒアリングがあったそうです。

実際の取消料の処理の流れはこのような感じになります。

①旅行会社から学校へ、取消料の請求をする。ただし旅行業約款で定められた範囲内。

②学校は旅行会社へ取消料の支払いをする。支払いの時期や方法は相談。

③併せて学校は、管轄の自治体より地方創生臨時交付金の交付を受ける。

これで、学校も保護者も取消料の負担が不要ということになります。

奈良公園の鹿(筆者撮影)

まとめ

いかがだったでしょうか?

修学旅行を中止したところで、誰れも何の得もしません。特に生徒さんたちのことを思えば、何とか安全対策を講じて実施してあげたいところです。

また文科省からは、中止ではなく延期をという通知が出ているようです。

春に実施予定だった学校は、秋以降に日程を変更したケースも多数あります。何とか生徒さんたちのためにも、早く平和な日常が戻ってほしいものです。

最後までお読みいただきありがとうございました。

この記事は、あくまでただの1社員としての見解ですので、読み物としてご覧ください。

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マイルの宝箱 | 管理人

おさむらい
おさむらい

JALときどきANA、時によりUAのマイルを貯めている陸マイラーです。目線を低くして、初心者の方や主婦の方など、誰れにでも優しく簡単にマイルを貯められるような情報提供を目指しています。旅行会社勤務ですが、添乗ではマイル加算運賃で乗れる筈もなく、もっぱらクレジットカードやポイントサイトでマイルを稼いでいます。旅行業界の裏話や、My Lifeのカテゴリーでは自分の好きなものを記事にしています。よかったなと思っていただける記事がありましたら、ぜひお友達にもご紹介ください。

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