Off Course The Night With Us(1989.2.26 東京ドーム)

My Life

一昨日から降り続いた雨は夜明けとともに降り止み、昼前からは陽射しも見えるようになり、気温も10℃を超えて、ここ数日に比べると幾分過ごしやすくなってきた。

1989年2月26日日曜日、オフコース最後のコンサートが行われる日である。

1988年にオープンした東京ドームは、初めてのプロ野球公式戦(対戦相手のヤクルトが勝利)をはじめ、美空ひばり・尾崎豊・矢沢永吉などの超有名アーティストのコンサートが行われている。今回の解散コンサートはオフコースのスタッフたちによる、東京ドームで最後のライブをという願いを実現させたものといわれている。

東京ドーム 公式HPより

チケット片手に歩くファン、ダフ屋のダミ声、「アリーナの方はこのままお進みください。1階席2階席の方はこちらへ・・・。」と拡声器で誘導するスタッフ、コンサート会場らしい雰囲気が東京ドームのまわりをつつんでいる。

回転ドアを回して東京ドーム内へ。内側からの風の抵抗を受けながら中に入ると、ほんの少し耳が変になったような気がするが、それもすぐに治る。

東京ドーム 公式HPより

会場内に入ると壁面いっぱいに掲げられたスポンサー各社の広告と、水色の1階席2階席がまず目に入るが、野球開催時と違うのは、フィールドいっぱいに敷き詰められたアリーナ席と、センター付近に設置された巨大なステージがあることだ。

客席がほぼ埋まり、照明がすぅーと暗くなると同時に、グレンミラー作曲のジャズナンバーとして知られる「Moonlight Serenade」が流れる。重苦しくも繊細で、もの悲しいようで灯りがともるようなこの曲は、解散コンサートの幕開けにふさわしい曲であろう。

やがて曲の途中でフェードアウトしてゆき、それと引き換えにシンセドラムのリズムが始まる。同年終了したSTILL a long way to goツアーのオープニングと同じような始まり方で、そのときは「緑の日々」かと思わせておいたところに「NEXTのテーマ~僕等がいた~」がきた。なのでてっきりまた同じかと思っていたところ、今回は本当に「緑の日々」がきた。

確かにいま 振り返れば 数えきれない哀しい日々 でも

あの時 あの夜 あの頃 二人はいつもそこにいた

過ぎてきたあの哀しみは いつまでも残るけど

僕らが出会った頃みたいに もう少し素直になれれば

緑の日々  作詞/作曲 小田和正

長いオフコースの歴史を振り返るところから始まったこの歌は、透明感という言葉がぴったりくるようなサウンドで、小田和正のボーカルの合い間に入るシンセサイザーの和音が印象的である。この解散コンサートの1曲目にふさわしい歌であった。

2曲目は、同じく同年のツアーで最後に歌われた「君住む街へ」

全体的に青い照明のなかで、白いスポットライトが各メンバーを照らす。この日の小田和正は白いワイシャツに明るい紺色のジャケット、清水仁は少し縞々の入ったようなベージュっぽいワイシャツに紺色のジャケット、松尾一彦は襟元が特徴的な白いワイシャツに上下黒っぽいスーツ、大間ジローも珍しく淡いグレーのジャケットを着ている。

小田和正の使用する機材は、前回ツアー同様KX-88のみを使用。マイクスタンドは横からではなく、KX-88の前にスタンドを置いて、まっすぐ自分の目の前にマイクがくるようにセッティングしている。

【MC】 「どうもありがとーう」「こんばんは、オフコースです」
「きょう、皆んなここへ集まって、それぞれ心の中に思うことがたくさんあると思います。」
「それに加えて、音が悪いとか、遠くて顔が見えないとか、同じ5千円でこの席はないだろとか。」
「いろいろあると思いますけど、そういう思いを今日は全部思い切って僕らにぶつけてください。」
「そんな気持ちを僕らは正面からしっかりと受け止めます。Thank You!」
「でも・・・、楽しんでください。Thank You!どうもありがとう。」

3曲目は前回および前々回のツアーでも演奏された、松尾一彦の歌う「LAST NIGHT」。曲のアレンジそのものは特に変更されたところはなく、淡々と演奏されてゆく。

4曲目は「夏の日」。こちらは1985年と1987年のツアーで演奏された曲で、ほのぼのとした音色のエレピが、過去のツアーを連想させる。

続いては清水仁のベースのイントロで始まり、そこにギターとシンセサイザーが絡んでゆく。このイントロ、昔レコードで聞いたことがある!と思った驚きの5曲目は「こころは気紛れ」。昔の曲も何曲かはやるんだろうと思っていても、この曲を想像したひとはたぶんいないだろう。5人になって間もないころのオフコースの、メンバーにとっても思い出の1曲だったのかも知れない。

明るい雰囲気の「こころは気紛れ」とは打って変わって、次の6曲目はサポートメンバーの神本宗幸による、聞いたことのない重苦しいメロディーのキーボードソロが展開される。長い前奏が続いたあと、大間ジローのカウントによって始まった曲は、清水仁の歌う「逢いたい」。先日2月3日のように声を詰まらせるようなこともなく、野太く、彼らしく歌い切った。

ステージは再び暗転し、大間ジローのスティックがゆっくり4回カウントされると、続いて始まった曲は「時に愛は」。この曲を聴きたかったファンも多かったに違いない。独特の雰囲気を持ったこの曲に、会場もピンと張りつめたような空気感である。

続く8曲目、小田和正がCm /B♭からKX-88でエレピ音を奏でる。マイナー基調の、聞いたことのあるような、でもまだあの曲とは分からないイントロが流れる。

終わる筈のない愛が途絶えた 命尽きてゆくように

違う きっと違う こころが叫んでる

ひとりでは生きてゆけなくて また誰れかを愛している

こころ哀しくて 言葉にできない

言葉にできない  作詞/作曲 小田和正

この解散コンサートを観に来た誰れもが聞きたいと願っていたであろう「言葉にできない」が、東京ドームに響き渡る。1982年ツアーの時のようなバンド演奏ではなく、ただただしんと静まり返った東京ドームで、小田和正が弾き語りで歌う。

2番を歌ったところで神本宗幸のシンセサイザーが間奏を重ねる。

間奏を弾きながら、小田和正は広い東京ドームの天井を見上げて何を思ったのだろう。

鈴木康博とふたりで始めたオフコース。やがて5人になり、鈴木康博と別れ、そしていま4人のオフコースとして終わろうとしている。数え切れない思い出の場面が、いくつもいくつも、この短い間奏のあいだに浮かんだことだろう。

「あぁ、もうオフコースは本当に終わっていくんだな」と思うと、ぐっと胸に迫るものがあったのかも知れない。

あなたに会えて ほんとうによかった

嬉しくて嬉しくて 言葉にできない

言葉にできない  作詞/作曲 小田和正

”あなたに 会えて ・・・・・・(沈黙)”

”ほんとうに ・・・(沈黙)” 

”嬉しくて ・・・ (沈黙)” 

小田和正がうつむく。歌おうとしてまた顔をあげるが、声が途切れる。

「もう、本当に終わってしまうんだ・・・。」

こみ上げてくる涙に、もうそのあとは続かない。左手で子供のように目を拭う。

いま目の前で起こっていることを理解したファンから、悲鳴のような「キャー」「ワーッ」という歓声があがる。「小田さーん!」「泣かないでー!」と叫ぶ周りのファンたちも男女問わず涙している。やがて歓声は手拍子に変わり、”LaLaLa~”と大合唱となる。きっとこの瞬間、ファンの人たちも、本当に今日でオフコースは終わるんだと観念したに違いない。

”(あなたに)会えて Uh Uh Uh Uh 言葉にできない”

”いま あなたに会えて Uh Uh Uh”

神本宗幸のシンセサイザーが美しいメロディーを奏でて、E♭で仕上げる。

ファンの大歓声と拍手が東京ドームに大きく響く。

再びステージが暗転し、大間ジローのスネアとハイハットから始まった9曲目は、 「きかせて」

あの頃と同じだね こうしていると でもそれは特別なことでなく

早いほうがいい 帰るなら 早いほうがいいね

きかせてどうしてあなたは あの時確かに僕を

きかせて  作詞/作曲 小田和正

アルバム「We Are」のころ、鈴木康博にオフコース脱退を告げられたといわれている。ヤスがそばにいるのは特別なことではない。そのときは小田和正もそう考えていた。 だから、帰るなら早いほうがいいと鈴木康博にメッセージを送っていた。そんなふうに考えながらこの曲を聴いてみると、1980年代初期にタイムスリップして、小田と鈴木のやりとりを傍から見ているような気分になる。

”きかせてどうしてあなたは あの時確かに僕を”

小田和正の高く透き通る歌声にファンが聴き入る。

続いての10曲目は、4人のオフコースになってから、コンサートで必ず演奏されている「たそがれ」

愛はたそがれ 光と影に酔い 全ては夢うつつ

たそがれ  作詞/作曲 小田和正

4人のオフコースは全て夢うつつなんだよと、コンサートで毎回演奏することでファンにメッセージを送っていたのかも知れない。

そして11曲目は、前回ツアーでも演奏された「夏の別れ」。イントロ部分は神本宗幸が弾き、メインフレーズは小田和正がKX-88で弾く。歌い終わり、バンドが後奏を演奏しながら小田和正のMCが入る。

【MC】
「どうもありがとう。」
「さっきは僕がいちばんしんみりしちゃって、楽しくやろうって言ったのに、反省しています。」
「だからあの歌は歌いたくなかったんですが、まぁ、泣いちゃったものはしょうがないんで。」
「ここからは思い切って楽しく行きたいと思います。」
「知っている曲があったらどんどん大きい声で一緒に歌ってください。」

12曲目は「IT’S ALL RIGHT(ANYTHING FOR YOU)」。ここ数曲とは変わってアップテンポなリズムに、会場が手拍子を送る。

このあと「She’s so wonderful」「君が、嘘を、ついた」「ぜんまいじかけの嘘」「Tiny Pretty Girl」「YES-YES-YES」と、4人のオフコースになってからの、これまでのコンサートでも演奏された曲が続く。

そしてMCで語ることもなく、本編最後の曲「生まれ来る子供たちのために」

君よ 愛するひとを 守り給え

大きく手を広げて 子供たちを抱き給え

ひとり またひとり 友は集まるだろう

ひとり またひとり

生まれ来る子供たちのために  作詞/作曲 小田和正

シンセサイザーの音に乗せて、小田和正・松尾一彦・清水仁の美しいコーラスが重なる。

真白な帆をあげて 旅立つ船に乗り

力のつづく限り ふたりでも漕いでゆく

その力を与え給え 勇気を与え給え

生まれ来る子供たちのために  作詞/作曲 小田和正
どうもありがとう

メンバーがステージ中央に集まり、ファンに向けて手を振る。

舞台袖に消えてゆき、場内には「君住む街へ」が歌入りで流れる。


【アンコール】

Yes-No

眠れぬ夜

「えー、これからは、皆んながオフコースだからね。Thank You!」

愛を止めないで

5人のオフコースの頃の楽しかった思い出が、メンバーの頭によぎったことだろう。大間ジローがドラムからステージ中央へ歩み寄る。泣きはらして目は真っ赤だ。

小田和正も歌い終わって、そっと両手で目を拭う。

いつもいつも

あなたのことは忘れないよ

故郷の山や海のように

故郷の友たちのように

また会う日まで

いつも いつも いつも

いつも いつも いつも

いつもいつも  作詞/作曲 小田和正

愛を止めないでの演奏時から大間ジローは涙、涙。

松尾一彦も最後のお辞儀をしたあと、顔を上げられなかった。

そんなメンバーを、小田和正は横から父親のように微笑んでいた。

・・・


いかがだったでしょうか?

5人そして4人のオフコースの集大成のようなコンサートだったと思います。

5人時代の「こころは気紛れ」「時に愛は」「言葉にできない」「きかせて」「生まれ来る子供たちのために」は、4人時代にはこのコンサートでしか演奏されておらず、本当に希少価値の高いものだったと思います。その中でも「こころは気紛れ」は、1970年代に演奏されてから今回のコンサートまで演奏されておらず、また小田和正がソロになってからも演奏されていないので、幻の1曲だったように思います。

後刻、東京ドームへ野球観戦に行った際、東京ドームでコンサートをした歌手の記念写真が掲げられているのを見つけ、オフコースはこのような写真となっておりました。

東京ドームにて 筆者撮影

いつか、一度でいいから5人のオフコースを観てみたいものです。

最後までお読みいただきありがとうございました。

【追記】

■歌詞の引用については著作権法32条に基づき、法律で定められた利用方法を遵守して掲載しております。

■MCについては、youtubeで閲覧したものを参考に再現しました。現在ではその部分は見られなくなっていますが、一部の楽曲は現在でも見られるようです(2020年7月現在)。

■画像については、キャプションのあるものについてはそのHPが出どころとなり、無表示のものについては、「PhotoAC」の無料画像から引用いたしましたまた、画像は全てイメージです。

■敬称略

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おさむらい
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JALときどきANA、時によりUAのマイルを貯めている陸マイラーです。目線を低くして、初心者の方や主婦の方など、誰れにでも優しく簡単にマイルを貯められるような情報提供を目指しています。旅行会社勤務ですが、添乗ではマイル加算運賃で乗れる筈もなく、もっぱらクレジットカードやポイントサイトでマイルを稼いでいます。旅行業界の裏話や、My Lifeのカテゴリーでは自分の好きなものを記事にしています。よかったなと思っていただける記事がありましたら、ぜひお友達にもご紹介ください。

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